3歳6か月の男の子(第一子)
赤ちゃんの頃はおとなしくて手のかからない子だった。イヤイヤ期も想像していたほど大変ではなかった。
イヤイヤ期を過ぎたあたりから急に乱暴になり、思うようにいかないとすぐ手が出るように。特に保育園で、毎日のようにお友だちをたたいてしまう。
どうしてつい手が出てしまうのか。実は胎児期~出産前後の出来事に原因がありそうでした。
2日近い難産(40時間)で、最終的に陣痛促進剤を使って生まれた。
お母さんも相当しんどかったでしょう。実は赤ちゃんもしんどかったんです。陣痛は生理的なものなので、赤ちゃん自身にもその痛みに耐えうるアビリティをもともと持っています。
けれども、その許容量をはるかに超える陣痛促進剤の痛みは、赤ちゃんにとっても想像を絶するもの。
かくいう私も3人目に陣痛促進剤を使ったので、よくわかります。猛烈な陣痛がくるのに、「まだいきむな!」と言われるので、必死でいきみ逃しをしたために、指先まで筋肉痛になりました・・・。
2日近いお産の中でのさらに陣痛促進剤の痛み。生まれてこようとしている赤ちゃんは何を感じたでしょう。
生まれるってこんなにつらいこと。生まれるってこんなに痛いこと。
生まれるのがこんなにつらいのなら、生まれてくるこの世の中は痛くてつらくて怖いところにちがいない。
これが、バーストラウマと呼ばれるもの。トラウマ、というと表現がおどろおどろしいのですが、要は 赤ちゃんが胎児期~出産期のこの世に生まれ出るプロセスでどんな感情を体験したか、によって、赤ちゃんの人生観・世界観が決定づけられる、ということなんです。
おなかにいる時に、まわりの大人たちの様子が不安や怒りに満ちていて、ちっとも楽しそうに感じなければ、「おなかの外って、苦労が多くてこわいところなんだ。生まれたくないな」と感じるし、
生まれてくるときに、想定を超える痛さやつらさがあれば、「生まれたあとも痛いの続くのかな。こわいこわい、生まれたくない」と感じます。
その体験が強烈に刻まれて人生を形づくっていくんです。
この子は「この世は怖いところ」という痛みの記憶を心の奥に持っていると考えられます。表面的にはニコニコして、大人からはわからなくても、心の奥ではいつも怯え、防御を張っています。だから、たとえ相手が善意で近づいてきたとしても、防衛心でつい手が出てしまうのです。
例えば、怖い思いをして人間が信じられず、警戒心の強い猫ちゃんは、こちらが手を出すとジャシっと爪でたたきますね(恐怖対抗)。そんなイメージです。
あれ?でも生まれてしばらくは手のかからないおとなしい子、だったんですよね?と、思った方は察しがいいですね。
そうなんです。それが「おとなしい いい子」の落とし穴なんです。
続きます。